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​丸山千枚田 復田の歴史

 この棚田がいつ頃造成されたかは不明ですが、西暦1601年(慶長6年)にはすでに2,240枚の田があったという記録があります。しかしながら、昭和40年代半ばから始まった稲作転換対策による杉の植林や昭和50年代以降の過疎・高齢化による耕作放棄地の増加によって、平成初期には530枚までに減少してしまいました。
 地元住民は、「自分達の代でこの貴重な文化遺産を無くすわけにはいかない。素晴らしい景観と農耕文化を後世に残し伝えていかなければならない。」と立ち上がり、平成5年に丸山地区住民全員による丸山千枚田保存会を結成し、丸山千枚田の復元と保全活動が始まりました。
 保存会結成後4年間で810枚の田の復元に成功し、1,340枚という日本でも最大規模の枚数を誇る棚田となりました。

丸山千枚田 平成初期
丸山千枚田 昔の写真

丸山千枚田 昔の写真
​モノクロ写真で残されているもので、昭和30年代の写真とされています。

丸山千枚田 昔の写真
1960年頃とされています。
大岩の下を走る自動車の道がまだない頃のものです。

1960年頃の丸山千枚田
丸山千枚田 平成初期の様子

丸山千枚田 平成初期
ほとんどの田んぼが耕作放棄地となっているのがわかります。
棚田が530枚まで減少していた頃です。

上記のように荒れ果てていく風景に「先祖から受け継いだ千枚田を復元したい」という地元住民の熱意と、「荒れる一方の貴重な地域資源である千枚田を復元することにより地域振興を図り、地域活性化につなげていきたい」と考える熊野市(旧紀和町)との思惑が一致することとなり、平成5年4月1日には市(旧町)が100%出資を行い、農林産物の生産・加工・販売、観光資源の開発、農地保全等を目的として「一般財団法人 熊野市ふるさと振興公社」(旧財団法人 紀和町ふるさと公社)の設立を行い、また同年の8月23日には丸山地区全31戸で構成する「丸山千枚田保存会」が発足し、市を含めた3者による千枚田復元へ向けての連携体制が整えられました。
丸山千枚田の総面積7.2haのうち、2.6haは現在も地域住民が個人で管理し、4.6haは公社が管理している。公社管理4.6haのうち1.54haがオーナー田。
そして同年10月より、530枚まで減少した田を復元するために雑木を切り倒すことから作業は始まりました。さらに切り株を掘り起こし、崩れた石垣を積み直すなどの困難な作業を年間約90日以上行い、平成6年には550枚、7年には840枚、8年には1,050枚、9年には1,340枚、面積にして約7.2ha(平成27年6月現在において各農家が3.1ha、(一財)熊野市ふるさと振興公社及び千枚田保存会が4.1haの管理を行っている。公社及び保存会の管理比率は上昇傾向にある。)となり目標を達成することができました。今後については、杉の植林が行われた田の復元は容易なことでなく、これ以上の復元は実施しない予定としております。
また、復元期間中の平成6年には、千枚田を貴重な文化資産ととらえ、市・市民が一体となって景観の保護に努めるとともに、有効に活用することにより“ふるさと”づくりに資することを目的として「丸山千枚田条例」が制定されました。

【熊野市丸山千枚田条例の抜粋】

 わたくしたちが誇りにしている地域資源に丸山千枚田がある。千枚田は、祖先から受け継いだ貴重な稲作文化で全国的に稀であり、存在が注目されている。
 しかし、千枚田における農作業は、地形上、機械による省力化に限界があり、加えて農業環境の変化もあり、休耕地と荒廃地がみられる。
 このような状況の中、この貴重な資源を保護し後世に継承していくことは極めて重要で、併せて有効に活用していくことが、わたくしたちに課せられた責務である。千枚田は、幾百年もの昔、一くわずつ大地を起こし、石を積み上げ、土をあてがいながら営々と2,400余枚を造成し、以来、今日まで休むことなく天水を貯え、芝を刈りこんで耕作し、管理してきたのである。
 また、ここに住む人たちは、裾野を埋めつくす雲海に朝の英気を養い、暮れなずむ連山の空を赤く染める落日に心を癒しながら、正に、千枚田とともに生き続けてきたのである。歴史は巡り、時は流れたとはいえ諸々の日本農耕文化の原点を内包しているのが千枚田である。
 わたくしたちは、ここに先人の英知と偉業を偲びこれを称えるとともに、千枚田に親しみ、愛しつつその保護に一層努力することを宣言し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、千枚田が美しく豊かな水田景観を形成し、かつ、貴重な稲作文化資産であることにかんがみ、市、市民等が一体となってその景観の保護に努めるとともに、生産の場としての有効な活用を図ることにより、ふるさとづくりに資することを目的とする。
(定義)
    :
(保護区域の指定)
第6条 市長は、千枚田の状況を総合的に勘案し、保護する必要があると認めた区域(以下「保護区域」という。)を指定することができる。
2 保護区域の指定は、あらかじめ保護区域内の千枚田の所有者等及び市議会の意見を聴いて行うものとする。
3 市長は、保護区域を指定しようとするときは、その旨を告示し、所有者等に通知しなければならない。
4 前2項の規定は、保護区域を変更する場合について準用する。
(保護区域内における行為の届出等)
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(助成)
第8条 市は、千枚田の保護及び活用を図るため、保護区域内の所有者等に対し、予算の範囲内において助成をすることができる。
(財源措置)
第9条 市は、この条例を施行するために必要な財源措置を講ずるものとする。

丸山千枚田オーナー制度の制定
 千枚田の復元により観光への活用が図られ一定の成果が得られましたが、さらに一歩踏み込み、「都市住民との交流を深めることにより、一緒に千枚田を守っていこう」という趣旨のもと、平成8年度よりオーナー制度が開始され、現在は(一財)熊野市ふるさと振興公社及び千枚田保存会管理田4.6haのうち1.54haをオーナー田として活用しています。全国各地から毎年100組を超える申込があり、田植えや稲刈りなどの農作業を通して、交流が図られています。
 また、平成11年度からは「丸山千枚田を守る会」という新たな制度を設け、オーナー制度とは別の形で保全に協力いただいております。

オーナーによる田植えのつどいセレモニー
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